【第20話】子供らの世話にならずに
「この歳にまで成って、もう何時お迎えが来てもいいです。出来れば子供らの世話にならずに。」とおっしゃる方がおられます。長く棲み慣れた家で、長患いなく、家族の方々に囲まれて、最期を迎えたい、そう言うお気持ちが感じられます。(実際自宅で最期を迎えられた方は、全国平均で5人に1人となっています。)現在御高齢の方々は戦前の家族制度のもとで「親に孝行する」ことを強く教えられ育てられた方々であり、また、現在介護にあたっている家族の方々にもその考え方がまだ残っております。高齢者の介護がこのような家族の手によって続けられているのが現状です。ところが最近では、大家族が減って核家族化が進み、戦前の「親に孝行する」という考え方だけに多くのことを期待するのが困難になってまいりました。特に小家族や高齢者夫婦世帯では、闘病生活が長期化すればその在宅介護が困難になります。しかしながら、疾患としては入院治療の対象とならない慢性疾患の方が多いのです。これに対して厚生省では在宅医療および在宅終末期医療を推進している訳ですが、これにより本人や家族が望むような闘病生活が送れるのは少し先のことかも知れません。