肥満の第一の原因は食べ過ぎです。食べ過ぎないための賢い食生活の方法を具体的に列挙してみましょう。@空腹の時には買い物に行かない。満腹の時に買い物をする。A食べ物は開け難い容器に入れて、目に付かない所にしまい、摘み食いしない。B簡単に大量に作れるインスタント食品を避ける。Cおかずを一緒盛りしないで、一人ずつ小皿に盛る。D食事の場所を決めておき、他の場所には一切食べ物を置かない。E決まった時間に規則的に食べる。F食卓の残飯は速やかに処分する。G食品をうまく選択する(例えば、鶏卵50gと豆腐100gは同じカロリ−ですが、豆腐を食べればおなかがいっぱいになる)などです。
【第6話】「血圧の薬は一生止められない?」
「血圧の薬は、一度飲み始めたら、一生止められないというのは本当ですか?」
患者さんからこんな質問を受けることがあります。降圧剤が、まるで一度手を出すと一生の身の破滅を招く麻薬のようにお考えの方がいらっしゃいますが、そうではなくて、降圧剤は、血圧の高い時期にのみ服用すれば良いものです。
血圧はいつも変化しています。一年の中でも、夏に低く、冬に高くなります。一日の中でも、日中に高く、睡眠中は低くなっています。また、その時どきでも、怒ったり悲しんだりの時は高く、ゆったり安静にしている時は低くなっています。血圧がいつも変化しているのは、生きている証拠だと言えます。
従って、一度血圧を測定しただけでは、高いとも低いとも言うことができません。何度か測定してみて、いつも高ければ、高いということになります。その時期(例えば冬期)にのみ降圧剤を服用すればいいということになります。ほとんどの方は、本態性高血圧であり、加齢とともに血圧は高めになって行きますので、ある年齢の頃に服用し始めた方は、その後も服用を続けることが多く、文頭にあるような印象を受けてしまうようです。
【第7話】「早朝トイレに起きて倒れた」
脳卒中のうち最も多いのは脳梗塞ですが、その患者さんから、発症した時のことを聞いてみますと、「早朝トイレに起きて倒れた」という方がしばしばおられます。その原因として、血圧の変化があげられます。血圧はいつも変化していて、一日の中でも、睡眠中は低く、日中の活動時には高くなっています。朝目覚めて床を離れる時、血圧がとても不安定になっていますので、もし離床時にめまい、立ちくらみなどの症状がある方は、朝目覚めてもすぐに床を離れず、床に入ったままでゆっくり休み、しっかり目が覚めてから床を離れるのが良いと思います。
次の原因として、脱水状態(体の水分が足りなくなること)があげられます。このような時には、血液が濃縮されて、粘度が高くなり、どろどろねばねばした血液によって、とうとう頭の血管が詰まってしまいます。これを防ぐためには、夜就床前に、コップ一杯の水分(コップ酒ではいけません)を飲むことをおすすめします。
また、朝起きたら、コップ一杯の水分を飲むことをおすすめします。朝飯前の一仕事をされる方であればなおさら、仕事の前のコップ一杯の水分を忘れないでください。
【第8話】脳卒中の予防には血圧が低い方がいい?
「先生、大変だ!血圧が高い、脳卒中になるから、早く血圧の薬を!」
患者さんからこんな訴えを受けることがあります。脳卒中の予防には血圧が低い方がいいのでしょうか?高血圧が脳卒中や心疾患の最も大きな原因であり、血圧が高いほど発症しやすくなることはもう明らかになっています。さらに薬を服用することで発症率が減少することも明らかになっています。
それでは、降圧剤を服用して血圧を下げれば下げるほど良いのでしょうか?心臓の血流の弱い患者さんでは拡張期血圧(血圧の下の値)が低くなると心筋梗塞による死亡率がむしろ高くなるという報告があります。脳の血流は、体の血圧の影響を受けずに、いつも一定に保たれるように出来ています(自動調節能)。ところが高血圧の人ではこの仕組みがうまく働かず、血圧が高ければ脳の血流は不要に増え、薬で無理に降圧すれば脳の血流も弱ってしまい、そのために脳血管障害を招きやすいと考えられています。高齢者の高血圧では降圧目標は収縮期血圧(血圧の上の値)は150で、拡張期血圧(血圧の下の値)は85〜90が適当とされています。
【第9話】甘い物を食べると、糖尿病になる?
「糖尿病があるようですよ。」
「おかしいな、甘い物は控えているのに。」
外来で患者さんとそんな会話が交わされることがよくあります。さらに、ご自身が糖尿病であることをよく知っておられる患者さんでも、
「今月の検査でも血糖が高いです。」とお話すると、
「実は、昨晩まんじゅう食べたんですよ。」とのご返事。
甘い物を食べると糖尿病になるとお考えの患者さんは多いです。実は、糖尿病の発症には遺伝が関係することが明らかになっており、単純な遺伝ではなく、いくつかの遺伝子によって決定されていると考えられています。このように糖尿病を発症しやすい遺伝の人が、ウイルス、ストレス、過食、肥満などの原因によって糖尿病を発症すると考えられています。特に、過食により、膵臓にあるインスリン産生細胞が疲労して壊れてしまうことが大きな原因とされています。従って、血のつながった家族の中に糖尿病の人がいらっしゃる人は、ご自身が糖尿病を発症しないように気を付けなければなりません。そのためには、甘い物だけでなく、一日の食べ物(三度の食事と間食)を丁度よく制限することが必要です。