ファミリーレストラン
西暦20××年、ある日。Kファミリーはいつものファミリーレストランに出掛けた。その日も店内は混雑していたが、彼らは運良く希望のテーブルに案内された。綺麗になったテーブルに着くと早速メニューを広げた。
丁度、隣のテーブルでは、先に食事を終えたファミリーが席を立ったところだ。
早速、何処からともなくウェイターとウェイトレスが現れ、ファミリーの食べ残しを片付け始めた。残飯を袋に入れ、空いた皿を重ねて持ち去り、テーブルクロスを新しいものに敷き替えた。その手際の良さは見事と言う他はなかった。次に案内されたファミリーが既にテーブルの脇に来ていた。彼らはその席が気に入った様子だった。店内の混雑は続き、Kファミリーも、立ち退きを迫られるかのように食事を急ぐのだった。そうして食事を終え勘定を終え、彼らは郊外の新興住宅地に借りたマイホームへ帰って行った。
そんな日の翌日、Kファミリーの隣の住宅で、独居の老女が急逝した。早速、市役所の職員が訪れ、御遺体を棺に納めて運び去ると、直ぐに作業服の人々が現れた。彼らは、老女の身の回りの品々や亡夫の思い出の品々をゴミ袋に詰めて持ち去ると、壁紙を張り替え畳を張り替えた。隣家は、三日を要せずして新築同様に蘇った。その手際の良さは見事と言う他はなかった。
「ねえ見て、このお家、とっても素敵よ!」
住宅課の職員に案内されながら、若いカップルが新居を求めて隣家を訪問したのは、殆どリホーム作業も仕上げの頃であった。
「はちのへ医師会のうごき」誌 平成12年1月 第367号 掲載