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 ある日などは、同僚のL君が、売り場の節電を心がけて、余分なパソコンのスイッチを切って回っていた。彼はK君の前を通り過ぎる時、全く事務的に彼の鼻を押してスイッチを切った。「あ!やめて!」と制止するいとまもなく気が遠くなり、気を失った。K君にはそれ以降の記憶が全くない。夕刻、売り場の脇の職員休憩室で再起動したK君は、いつも通りの帰途に就いたのだった。
 そんなK君が得た結論は、自分が死ぬときも、こんなふうに、スイッチが切られて、 自分は気を失って、今度は再起動することなく、ずっとそのままなんだろうなぁ、ということであった。(平成19年5月31日)

「青森県医師会報」530号に掲載

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